インドア派。

日常のメモ書き

夏の風物詩

「2時間ほどか」
椅子から立ち上がり背伸びをする
固まりかけた筋が、体を伸ばした分だけ柔らかく伸びたように感じた

少し、咽が渇いた。
部屋を出て僅か3秒歩くだけで辿りつくキッチンの流し台、蛇口にグラスを近づけて取っ手を下げる。
流れ始める透明な水道水がグラスを満たしていく

取っ手を元に戻し、グラスに口をつけた



その時は、何か様子が違ったような気がした。

何の気もなしに電気も付いていない真っ暗なリビングを覗く。
足元に柔らかい感触が触れた。飼い猫が擦り寄ってきたのだ
壁のスイッチを押すと、蛍光灯がパチパチと言いながら部屋を照らし始める。
足元にはいつも見慣れた三毛の猫がいた
よしよし、と言いながら頭を撫で回す。
ぐるる、と一つ咽を鳴らし、気まぐれに手を離れた猫はトコトコとテーブルの下に駆け込んだ。

横にでもなる頃だったのだろう、大きなあくびをすると、猫は自分の右前足を舐めはじめた
直後だった。その、いつもの毛づくろいが止まったのは。


猫が目を向けている先に何かが居た、
平凡すぎる「いつも」を忘れて見入ってしまうくらいに興味を引き付ける、何かが。
わからなかった。私が、丁度死角に入っていた”それ”を理解するのには僅かな時間が掛かった。


私が理解する前に私に気付いたのだろう。”それ”が私の視界に一瞬だけ入った。そして”それ”はすぐ次の瞬間に、別の物陰に身を隠した。


戦慄


状況を理解した私は、この言葉の意味をリアルタイムに感じている
このあまりにも長い長い時間、しかし僅かな一瞬一瞬で。
動かなければ。
何をすればいい?
動かなければならない。
だから、何をすればいい?
幾度か無意識な自問自答を繰り返した後で、頭の中の思考がブツン、と切り替わった



辺りを見回す、
足元に転がっていた棒切れに手を伸ばす。


一瞬躊躇した。
(この棒も、”それ”に汚染されているかもしれない)
きりがない。腰を下ろし棒を引っ掴んだ


のそのそと寄ってきた猫が、さっきと同じように足に擦り寄ってきた。
警戒心の無い、普段通りのスキンシップ。
それは猫自身が”それ”に気付いてからのここまでの一瞬の間に、”それ”に対する興味を失っているようだった



”それ”が見えなくなった場所を眺める
ここで。ここへ。ここに。

ぞくり
ぞくり
ぞくりぞくり

思考が緊張していくのがわかる。
”それ”がいる。目の前に、視界を遮るいくつも並んだ物陰の後ろ。
黒い影に隠れて”それ”は間違いなく今私の目の前にいる

思考の次は全身が、神経から固まっていく。
びりびりと緊張しきった自分自身の体が、僅かに頬に掠った自分の髪の毛に反応する、
肘、膝、肌に擦れた服の裾をも”それ”の感触だと錯覚する

握り締めた棒切れの軋む音が、微かに聞こえた気がした
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  1. 2006/08/11(金) 05:14:23|
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